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2019年2月9日開催 まんがスクール大会in博多 アフターレポート!

2019年2月9日(土)に福岡市内で行われた「まんがスクール大会in博多」。幸田もも子先生と水野美波先生のお2人が一緒にまんがスクール大会の講師を務めてくださったのは今回で2回目でした。
前回聞ききれなかったお話を中心に、講演会の様子の一部をご紹介します!

Q:主人公のキャラはどうやって考えますか?
『ヒロイン失格』のはとりは腹黒さを描き過ぎて疲れてしまったので、次は天使のようないい子が描きたいなと、『センセイ君主』のあゆはを描きました。自分の腹黒い部分を凝縮して出したのがはとりで、自分の優しい心を持った部分を凝縮して出したのがあゆはです。『あたしの!』のあここは、よりありのままの自分に近いイメージです。自分の一部分をキャラに置いていくという感じですね。自分の中の一部を主人公にすると、迷ったときにどう考えるかが分かるから、私は描きやすいです。
私は男子を描くのが好きで、男子主人公のまんがが好きだったので、自分でもそれを描こうと思いました。ヒロインに自己投影をしないから、ヒロインを描くほうが難しいなと思っていて。なので、男子主人公のほうが描きやすいですね。
主人公に自己投影をするわけでもなくて、どちらかというと、悩んでいるキャラを諭すほうのキャラに自分の気持ちや価値観を入れることが多いです。ヒロインが悩んでいるときに、ヒーローが「こうじゃん」と諭して、ヒロインがハッとする、というような部分。だから、私が主人公キャラに「あなたこうしたほうがいいよ」と言っているような感じですね。
Q:男子のキャラクターはどう考えていますか。
男子は自分がかっこいいと思う男性を描いています。かっこいいと思う男性というのは、身近にいる実際の男性、芸能人、まんがのキャラ、全部です。自分はどういう人のどういうところをかっこいいと思うんだろう、ということをすごく考えて、それを投入する感じです。特にこだわっているのは、一貫して全員スペックが高いところ(笑)。すごく背が高いとか、いつも全てを知ったような顔をしているとか。そういう好きなポイントを入れると描いていて楽しいし、ノリノリで描けますね。
私は自分が本当にかっこいいと思うキャラがちょっと年齢層高めで、あまり少女まんが向きじゃないんです。だから、自分の好みの二番手、三番手、四番手あたりの男の子を描いている感じです。高校生キャラだったら、青臭いほうが好きなんですよ。かっこいいキラキラした感じは描くのが苦手で、失敗しても頑張っているような子。男の子も成長させたいという思いがあるから、男子主人公を描きたいんですよね。
Q:キャラクターはどうやって掘り下げますか?
この人は怒るのかな、怒らないのかな、泣くのかなとか。怒るとしたらどういうときに逆鱗(げきりん)に触れるんだろうとか、そういうことを考えます。
このキャラがなぜこういう性格になったのかという経緯や、生い立ちを考えるのがすごく好きです。どういう両親から生まれて、どういうきょうだいに囲まれて、どういう学校生活を送ったかとか。たとえそれが作中に出てこなくても、ちょっと反応に困ったときに「この人はこういうことを言いそうだな」と想像しやすいんです。短いページ数の読みきりなら要らないかもしれないですけど、キャラクターの深みにはなるのかな、と思いますね。
Q:ありがちな話じゃなくするにはどうすればいいですか?
私は自分を投影して描くので、同じようなことを感じていても他人とあまりかぶらないというか、自然とオリジナルになります。そのキャラクターにどれだけ自分が共感できるかでもいいと思うんです。ありのまま丸っと自分を描くんじゃなくてもいいから、どれだけ自分がキャラを理解できているかでオリジナリティーが出るのかなと思います。あとは自分の好きなものが作品に入っていると、読んでいて分かりますね。
投稿作を見て「ありがちかな」と思うのは、きれいにページ分割されて、キャラの心情もきれいな波になっているんだけど、セリフが「本当にこう思っている?」と感じるときですかね。「この子はこれを言わせておけばいいよね」みたいなセリフが多いとき。言葉の意味は同じでもいいんですけど、言い回しはそのキャラによって違うと思うんです。「好き」にもいろんな言い方がありますし。セリフをうまい具合に書けるとキャラが生きてくると思います。
Q:冒頭の見せ方で、気を付けているポイントはありますか?
最初から説明がごちゃごちゃあると読む気をなくしちゃうので、冒頭の見開きはとにかく分かりやすくしています。前の担当さんに言われたんですけど、「最初の見開きは誰だって開くけど、次の見開きの左ページをめくるかめくらないかは面白いか面白くないかで決まる」と。だから、最初の見開きは特に面白くなるように意識していますね。
Q:話の見せ場で、気を付けているポイントはありますか?
見せ場に行くまでの過程が一番大事だと思っているので、過程をしっかり作っていきます。過程がうまくいっていれば、あとは見せ場はドカーンと描いてしまえばシンプルなセリフでも盛り上がると思うので。ネームも、見せ場にもっていくまでがすごく難しいです。
Q:ネームのテンポを良くするコツはありますか?
ネームをめちゃくちゃ読み返します。バーッと早く読んで、目が引っかかったら「たぶんこれは面白くない」、目が滑ったりしたら「きっとこれは面白くないんだろうな」。頭を空っぽにして読んだときにスッと読めたら、きっとまとまっているんだろうなと。あとは、同じエピソードが続いちゃうと、中だるみしてテンポが悪くなりますね。
技術的な場面転換は新人時代によく言われていました。30ページがずっと同じ1日で終わるじゃなくて、日付や場所を変えるようにって(笑)。あと、キャラ同士の会話が続いちゃうとテンポが悪くなるので、例えば黒板を消させたり、どちらかに何か行動をさせたりします。ずっとバストアップの会話だと目が滑ってしまうので、ちょっと動きを出すだけでも印象が変わります。
Q:女の子をかわいく描くコツ、かっこいい男の子を描くコツは?
男はとにかく色気が出るように、筋とか手のゴツゴツ感をフニャッとしないように硬い生き物という感じで描きます。逆に女の子はマシュマロのような柔らかさというか、かわいくなるように描いていますね。私は手・腕フェチ、あと首筋フェチなんですが、そういう作家さんの好きなものが描いてあると、読んでいても楽しいです。この人は絶対これがフェチなんだみたいなのが、見ていると分かります。
男子は実写の写真集を参考にして描きやすいんですけど、女の子は、写真を参考にしても全然かわいくならないんです。2次元になると腰がめちゃくちゃ細くなったりするし、女の子のほうが実写との差が大きいからだと思うんですけど。なので女の子は2次元の、素敵なイラストレーターさんの絵を模写して練習しました。
Q:デビュー後に苦労したことがあれば教えてください。
同期が優秀過ぎて、みんなどんどん読み切りが載っていくのに、私は1本もコンペに受からなくて…。自信がめちゃくちゃある人間だったんですが、全て打ちのめされて、まんがが向いていないんじゃないかと考えていました。
でもやっぱり、自分は絶対に大丈夫という謎の自信があって。目標設定を支えにして、「どんなに今つらくても25歳まで駄目だったら諦めて他を見つければいいんだから、とにかく今は死ぬ気でやろう」と思ってやっていました。別マに掲載した同期の作品とかをわざと壁の見える位置に貼って、「見たくない」というところから、逆に「見る!!」みたいな(笑)。わざと自分を奮い立たせたりしていましたね。
デビューしてから初連載まで6年かかったんですけど、その間は読み切りをポツポツ描いていただけで、ネームはなかなか通らなかったんです。昔は話を作るのがすごく苦手で、絵を描くほうが楽しくて、乙女ゲーアプリのキャラデザや本の挿画とか、絵の仕事を受けてやっていました。でもそれがすっごく大変で、クライアントさんがいるので駄目出しもすごくされるし…。そう考えたら、やっぱりまんがは自由だな、もちろん担当さんに直されるけど、自分の描きたいものを一番描けるのはまんがじゃないか、と。やっぱりまんがを頑張ろうと、ちょっと寄り道したけどまた戻ってきました。
Q:デビュー後の苦労はどうやって乗り越えましたか?
当時、ポップ&キュートみたいなまんががすごく流行ったんです。たぶん私は焦ってその流行りに乗っかってしまって、キャラを描くというより、とにかくこういうかわいい女の子とかっこいい男の子がいたらいいんでしょう、みたいに考えてしまっていたんだと思います。そこから1回冷静になって、自分の感情をまんがの中に入れてみたら、スルッとネームができたんです。16ページのデビュー作が友達の彼氏に恋しちゃうような話だったんですけど、もう一度そういうネタで30ページでやってみようと思って。失恋経験が多かったので、そのときの感情を描いてみようと思ったら、気持ちがすごく乗って久しぶりに楽しく描けたんです。それが突破口になりました。
『虹色デイズ』を連載できたのはラッキーだと思っていて。それこそ『虹色』も最初のころはネームもあまり考えられていないというか、考え方が分からないまま取りあえずノリで描いていた部分がありました。楽しく描いてはいたけど、あまり心理描写とかはしていなかったんですよね。それが3巻ぐらいで、やっと当時の担当さんに、「だんだんまんがらしくなってきたね」と言われたんです。そこからですね、私がハッとしたのは。担当さんのその一言、「まんがらしくなってきたね」というのが、抽象的なんですけど、自分でもなんとなく、「これがまんがか」と掴めた感じがしました。
Q:新人時代の担当との付き合い方について教えてください!
新人時代は、とにかく担当さんの言うことを聞いてネームを直していました。新人なので、聞いて直したのにできていなかったりするので、また話を聞いて直して、それでも分からないことがあったら、また聞く。私は担当さんの言う言葉が全然理解できていなかったりしていたので、細かい事でも何でもいろいろ質問をして、「とにかくやる気があるんです!」と伝えるために、ネームはバンバン出していました。間を空けるとネームを出しにくくなるし、担当さんもいろん作家さんを持っているから、自分の名前を覚えてもらうのが一番かなと。
分かります! 私もネームの返事が来なかったらその間にもう1本ネームつくってまた出していました。自分の中で納得いく形まで完成させて出すというのはすごく大事なんですけど、新人時代は直しがあって当たり前だから。自分の中での最高の形って、たぶんそれほど最高でもないことが多いんです。未完成で自分でもよく分からない状態で出すのは下着で歩くぐらい恥ずかしいと思いますけど、でもそれをバンバンバンと出して直されるほうが絶対いいと思うんです。とにかくバンバンネームを出す!
Q:ずっとまんがを描き続けるモチベーションはどこから生まれますか?
まんがを描くのが楽しいです! やっぱり楽しくなきゃやってられないですし、私の場合は何よりも最優先がずっとまんがなので、べつに無理しているわけではなく本当に楽しいから、一番やりたいことをずっとやっているというだけですね。もちろん苦しいときもあるんですけど、でもやっぱり好きだから、「恋している人につらく当たられて苦しいけど、でも好きなことはやめられない!」という感じです。
私もまんがを描いていて楽しいです! でもやっぱり描いているときは、しめきりあるし、眠いし、つらいです。つらいですけど、終わった瞬間の達成感がすごく好きなんです。「あ、終わった」と思ったら、「来月も頑張ろう」と思って、それを延々続けている感じです。「その達成感を楽しいと思えるのはドMだよね」と言われます(笑)。
最後に投稿者へのメッセージをお願いします!
ここに集まった方々はきっとみんなまんがが大好きで、四六時中まんがのことを考えている人たちなのだなと思うと、仲間がたくさんいるようで私はすごくうれしいです。今は自分で描いて発信できる場所が色々ある中で、雑誌に投稿してくださるのも心強いです。担当さんと一緒に作品をつくるということは、自己完結していない、もうひとりの脳みそ・考えをお借りするということなので、自分ひとりで描くよりも楽しいし刺激が多いと思います。今担当さんがいない方もいるかもしれませんけれども、頑張って担当さんが付くようになって、一生懸命考えてまんがを出して、皆さんがどこかでデビューできますように応援しています。頑張ってください!
男子主人公の少女まんがを描いている私が言うのも変ですけれど、やっぱり少女まんがを描くのは楽しいですし、読者さんに喜んでもらえたら本当にうれしいし、特に別マは人気雑誌なので色んな方に読んでもらえて、すごく幸せな仕事だと思います。ぜひデビューを目標にして頑張ってほしいです。夢心地な感じでこの世界に入ってしまうと意外と大変だったりするかもしれないので、「別マでいっぱい漫画を描くぞ」という目標を立てて、メンタルを強く持って、「担当さんに駄目だしされても負けないぞ」くらいの気持ちでいっぱいまんがを描いてください。すてきな少女まんがを読ませてくれたらとてもうれしいです。頑張ってください!
幸田先生、水野先生、ありがとうございました!