まんが投稿

河原和音先生に聞く!実践ネーム塾
 第4回 キャラクター その③

――今回は、男子をどう描くかについて伺います。

先生は男の子と女の子、どちらのキャラを先に考えますか?

私はだいたい女の子ですね。前回お話したように、自分の友だちとか周りの人を見ていて出てくる「こういう女の子好きだな」という気持ちから始まって、「じゃあどういう男の子と?」と考えていきます。あと、女の子の気持ちの方向性がテーマになっていることも多いので、女の子からが多いのかなと思います。

魅力的な男の子を描くにはどうしたらよいでしょう?

難しいよね……。周りのまんが家さんたちと話していても、みんなイケメンについて悩んでいるみたいです。イケメン、難しい(笑)!

ちなみに先生は『素敵な彼氏』の桐山くんのどういうところをかっこいいと思っていらっしゃいますか?

余裕があるところかな。なので、あまり余裕を崩さないようにはしています。あんまりほっぺが赤くならないように、とか(笑)。余裕が崩れると、かっこわるいというか微妙な感じになっちゃうかなと思って。表情を豊かにできないから難しいですね。気をつけないと全部同じ顔をしているように見えてしまうので。

――以前別のインタビューで主人公の女の子から見たイケメンを描くのが大事、とおっしゃっていましたね。「クラスの人気者」じゃなくて「私に人気者!」であり、主人公との関わりの中での「イケメン」が描けたら、それはいい作品になる、と。

そうですね。「クラスの」人気者を描こうとすると、いかにも「まんがだなあ」という感じの男の子になってしまいそうで……。

――前回の「設定っぽい」キャラ問題とつながりますね。

『ホットロード』のハルヤマくらい説得力を持たせて描けるならクラスの人気者を描いてもいいと思うんですけれど。私、少年まんがも少女まんがもたくさん読んでいるので、クラスの人気者的なキャラクターが出てくると、「ああ、きっと裏があったりもして、次はきっとこういうことをするんじゃないかなあ」という条件とかパターンみたいなものが見えてきてしまうんですよ。

――あまりにもパターン化された男子だと、ときめきづらいかもしれませんね……。まんがとしてのおもしろさも薄まってしまうというか。

ただ、そういうパターン化されたキャラクターがすごく好きな人もいると思うんです。描いている人が、大好きでたまらないのなら描いていいと思う。だって大好きなんだもん(笑)!

――「イケメンってこんな感じかな」と描くのではなくて、「私はこういうイケメンが描きたいんだ!」と思って描けばそれはそれで迫力あるものになりそうです。

そうですね。一度描いてみて評判が悪ければ、描くのをやめたらいいだけなので(笑)。大好きなんだけど自分が描くのは向いていないな、っていうものは私にもありますから。

ギャップを見せるエピソードは、人間性を感じられるものに

男子のキャラクターを守り過ぎずに、自然に崩すにはどうすればいいですか? 「この男の子はこんなことしないよ~」と読み手が思わないように描きたいとは思うんですが、キャラを守り過ぎるあまり、単調になったりするのもいやだなと……。

ギャップ的なものをどうつけるか、ということなのかな。「この人って意外とこうなんだー」っていうところを追加したいんだよね?

そうです!

ギャップ、みんな見たいよね。自分だけが知っている、好きな人のよいところ、なんてキュンとしちゃう。

はい! ただ……場合によっては「こんな〇〇くん見たくなかった!」ととられることもありますよね。

ギャップって、「不良少年が突然ピアノを弾きだす」とかそういうことじゃないと思うんですよ。普段のその人の延長線上にあるものだよね……って担当さんが言っていました(笑)。例えば……野球の話なんですが、私は日本ハムのファンなので、対戦相手のチームって、全員すごく強そうに見えるんですよ。困ってなさそうで。でも西武の選手がバラエティに出ているのを観たら、みなさんすごくかわいらしくて……山川穂高選手がもうひとりの選手と一緒に試合が終わった後のロッカールームでエゴサーチをしている、という話をしていて。それを見て、山川選手ってエゴサとかするんだ! なんてかわいいんだ!と思ったんですよね。すごく人間性を感じたんです。

――確かに、強くて怖いライバルが、急に身近な人に感じられますね。

なので、ギャップを見せるエピソードは、人間性を感じられるものにするのがいいと思います。スポーツまんがでも……特に少年まんがみたいにキャラが多いものの場合は、相手チームのキャラに、かわいげを出したり、ギャップを描くことがありますよね。読者に親しみを持ってもらえる効果があるのかな?と思います。過去を出す方法もある気がするけど、それはまた今度(笑)。

なるほど……。河原先生の作品では桐山くんもヨウも「こんな側面もあったんだ! ありがとう先生、おいしいです!」と思えます。

『高校デビュー』のヨウの時は、自分が気持ちいい範囲で崩していたんですよね。「こんなことしてやったぜ!」とか思いながら(笑)。でも私はもともと、崩すところは楽しく描けるんだよね。かっこいいところとか、キメているところを描く方が難しかったです。照れてしまうので。にしひろさんは、照れない?

私は……照れはないかもです。

それは才能だよ! すごくいいことだと思います。崩したり、意外なところを描いたりするのも、思い切りやったほうがいいんじゃないかな。うん、思い切りやろう! そうしよう(笑)! 自分では、どういう塩梅で崩したらいいかはなかなかわからないから。自分でやり過ぎないように制限して描いてしまうと、意外な一面があったかどうかもわからないようなシーンになってしまう。やり過ぎていたら、いずれ誰かが止めるので。

――担当編集者だったり、読者の反応だったりがありますよね。

はい。さっきも言ったように、思い切りやってみて「それは違う!」って言われたら引っ込めて、どのくらい崩すのかを建設的に考えていったらいいんじゃないかなと思います。

よくわかりました!ありがとうございます。

話していて思ったんですけど……ギャップを描くことの目的って、それを見たキャラの気持ちに何らかの変化が生じることなのかもしれないですね。その人にどういう部分があると、心の距離が近づくのか、もしくは離れるのか……ということなのかなと思います。

主人公にとって「都合の悪い男子」を置く

  

――さきほどおっしゃっていた、この女の子には「じゃあどういう男の子と?」というお話について伺いたいのですが、男女の組み合わせを考える時に意識すべきことというのはありますか?

「私にぴったりの都合のいい彼氏」を用意してはいけない、と思っていて。あれこれ悩んだり、いつもひとり相撲だったりするような女の子に、「俺はそんなのわかってるぜ!」っていう「私のことを全部わかってくれる彼氏」を用意しちゃうと、読んでいて「残念!」と感じると思うんですよ。だから、「どうやっても難しい男子」を相手に持ってくる。主人公は、面倒な自分とつきあいつつ、彼氏もゲットしていく……!という、ディフィカルトなミッションに挑む(笑)。だからといってただ「お前なんか嫌いだ!」って言う男子を置くということじゃなくて……あくまでも、なんでこんなにハードなの?という、主人公にとって都合の悪い男子を置いてみるのがいいのかなと思います。

――主人公の性格やシチュエーションによって、どういう都合の悪い男子にするかが変わってくるということですね。