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2018年4月7日開催 まんがスクール大会in札幌 アフターレポート!

2018年4月7日(土)に行われた「まんがスクール大会in札幌」は、たくさんの投稿者の方が参加してくださって大盛況! 当日は河原和音先生と椎名軽穂先生の講演会も行われました。同年デビューのおふたりによる、まんが愛に溢れた講演会の様子をお伝えします!

Q:ネーム完成までの工程を教えてください。
キャラクターのセリフなど、最初に思いついたことをどんどんメモしていきます。頭の中で大体の流れを作ってから簡単なプロットを作り、すごく小さいミニネームを作って、その後、ちゃんとしたネームにします。ミニネームは、直すのも楽だし、全体も見えるし、私は効率がいいです。
キャラクターが決まったら、目をつぶって、ふたりが会話を弾ませられるかどうか想像します。想像して、ちょっとずつ進んできたらセリフをメモして、ミニネームみたいなものは作らず、そのままネームに起こしていきます。ストーリーは、セリフの流れやキャラクター同士の掛け合わせから「何となくこういう流れになるかな」という感じで、少しずつ出来ていきます。
Q:魅力的なキャラクターの作り方は?
自分が面白いと思ったり好きだと思った部分をしっかり入れることが大事かなと思います。あとキャラの組み合わせで話が動いたり動かなかったりするので、面白くなる組み合わせの相性も大事だと思います。
男の子でも、女の子でも、いいところと悪いところを考えます。例えば、明るくて面白い人を描きたい場合に、その人が一体どういうところで怒り、どういうところで悲しみを感じるか。特にどんなときに怒るのかというのは結構重要で、それによって新たにエピソードが出てきたりもします。
Q:ストーリー中で、キャラクターの見せ方について意識していることはありますか?
さっき椎名さんが言っていたように、その人が喜怒哀楽をどこで見せるかというのは結構大事かもしれないですね。ストーリーの中でかっこいいことは言ってくれがちなので、「こういうことで笑う人なんだ」とか。そういうところでキャラクターが出ると思うので、例えばそのときの笑顔とか、ポイントになる場面や見せ場を一生懸命描くのも大事だと思います。
私はキャラクターからエピソードを考えることが多いんですが、先に思いついたエピソードからキャラクターを起こすこともあります。先にエピソードを思いついた場合は、じゃあどういう子だったらスムーズにこのエピソードができるのか、前後はどうなのか、などを考えます。先にキャラクターを考えた場合は、そのキャラクターがここに描きたいエピソードに行き着くまでに、一体何があったらたどり着けるのか、とか。そこの違和感を無くして、自然に流すことができるとすごくいいなと思います。そこに違和感があると、ご都合展開っぽくなるんですよね。
Q:キャラクターをつかむにはどうすればいいですか?
爽子は、最初どこがポイントなのか、何がしたくて、どの気持ちが一番強いかが見えてこないうちは、ただの暗い子というか…。キャラがつかめたのは「友達がほしいんだ」というのが分かってからですね。そこに気持ちを向けて描けるようになりました。
その子の気持ちの方向性というか、「これが欲しいんだ」とか、「これが大事なんだ」みたいなのが分かったほうが、キャラがはっきりするということかな。あと、爽子の友達がほしいっていう気持ちはみんなもあるから、そこは共感しやすいと感じます。友達がほしいけどうまくやれる子ばかりじゃないですしね。
私は、連載のときはキャラクターが一言で言えるほうが分かりやすいし、「この子はこういう反応をする」というのがある程度決まってくるので描きやすいと思いますが、必ずしも一言で言えるキャラクターにする必要はない、そうじゃなくても全然いいと思っています。
Q:セリフやモノローグはどうやって考えますか?
セリフの掛け合いだけをわーっと書き出して、それを組んでいく感じが多いですね。でも、風早と爽子に関しては、それを作ってもあまり意味がなくて。表情がついた上でのセリフをネームに起こさないと、次に何がくるか分からないんです。ちょっとした表情のずれで、このセリフは出てこないな、となってしまうというか。
この子はここまで考えないとか、この子はここまで理屈っぽいとか、主人公によって出ないモノローグってあるので、その子の言葉になって出てきます。私は気持ちにきちんと名前をつけるのが好きなんだと思うんですよね。ネームで流してみてそのときの気持ちが出てきたりするんですが、やっぱり深く入り込まないとそこは出てこないです。
Q:話のネタはどのように思いつきますか?
「あの人かっこいいな」でも「あのドラマのあのシーン好きだな」でもいいんですけど、何となく自分の中にたまってきたものがあって、頭が動く瞬間みたいなのがあるんです。映画や小説を見て、何に対して面白かったとか、何に対して心が動いたのか、というところがポイントなんだと思います。自分が何に興味を示し、何を良いと思い、何にときめくか。「私こういうの好きなんだな」と思ったら、そこから考えたりしますね。
私は何か不満に思っているときとかに、「こうだったらいいのに」と考え始めたりします。映画を見ていても、私はハッピーエンドが好きなんですけど、すごくいい映画だったのに最後「あの人さえ死ななければ」ということがあって。じゃあ、「その人を幸せにしたい」と考え始めることもあります。椎名さんの言うとおり、心が動く感覚というのが大事なんだと思います。
Q:別マの主な読者層である中高生に共感してもらえるようなストーリーづくりのために意識していることはありますか?
中高生に共感してもらえるかというのは私はあまり重きは置いていないんです。何に興奮してもらえるかとか、面白がってもらえるかというのが、一番軸になっています。自分の中高生のころの記憶って、もはやほぼないんですが、中高生のころに別マでこれが毎月すごく楽しみだったとか、次の号が待ちきれないとか、そういう気持ちはすごく覚えていて。そういう気持ちになれるまんがを描きたいというのが、テーマなんです。結局、まんがは面白いか面白くないかだけだと思うから。
共感も「面白い」の1つではあるけど、「面白い」の1つでしかないと思うから、そこだけにとらわれなくてもいいのでは、とは思います。どうでしょうか、河原さん?
いいと思います(笑)。
あと、中高生のときの、たぶん今の中高生も感じているであろう共通の気持ちって色々あると思うんです。「みんなやりたくない委員になっちゃった」とか、「授業ですっごく当てられたくないのに」とか、「私だけ携帯買ってもらえない」とか。そういうちょっとしたエピソードは、皆さん経験してきているはずなので、それが描こうとしていることに垣間見えてくるといいのかなと思います。
恋愛に関しては、「中高生に向けて」と特別意識しなくてもいいと思います。大人になっても意外とそんなに変わらないし、中高生も思っているより大人なんですよね。
分からなくても分からないなりに読みますし。自分が面白いと思うことを描いちゃって大丈夫ですよね。
Q:ストーリーを作るときに、気を付けているポイントを教えてください!
話を作るときに一番気をつけなきゃと思うのは、中だるみというか、間の部分です。全部大事なので、間も雑に描かないようにしたい。起と転と結ができたとしても、その間の部分もきちんと面白くできているかどうかでだいぶ違ってくると思います。
今回の話は全体的にどういうムードなのかというところです。テンポ良く進ませたいのか、ゆったり間を取ってふたりの雰囲気を見せたいのか。テンポ良く進めるタイプの話だったら、無駄を省く。間合いを見せたければ、ふたりの空気感を立てるために大きくページを使います。やりたいことのために場を作ってあげるイメージです。
Q:話の出だしでつかむコツを教えてください!
出だしがモノローグよりは出だしがエピソードのほうが読まれる気はします。エピソードを入れてからモノローグを入れたりして、とにかく最初にモノローグで自己紹介をしないようにしたほうがいいと思います。
面白いまんがってみんなエピソードから始まってるんですよね。「私、誰々」とかじゃなくて、エピソードによる自己紹介というか。1ページ目でどんな子か分かって、その子を応援できるっていうのはすごく大きい。和音さんの漫画ですけど。
でも、自己紹介でも面白いものは面白いから、何とも言えないんですよね。キレのあるモノローグで始まって、それに面白みがあれば、「おっ」と思って読んじゃいますし。
Q:どうすれば盛り上がるストーリーを作れますか?
16Pだったら、絶対何か1つ大きな描きたいポイントがあるはずで、それは審査している人には大体みんな分かると思います。そこをぶれないように頑張る。話をまとめることよりも、最初に「ここが面白い!」と思ったところを強くするためにどうするかを考える、ということですね。
「この話はこうなるでしょう」という予想から逸らすのも面白さだけど、期待に応えるのも面白さなので、読者の予想よりも大きく見せてやるんだという気持ちで、でも、「こうなってほしい」という期待を汲めるかたちで見せ場まで持っていけると、少女まんがとしてはすごくいいんじゃないかなと思います。難しいですけどね。
期待している方向で期待を超えるって一番難しいんですよ。だからこそ、それをみんなやりたいんですよね。それはプロとか、投稿しているとか、そういうことは全く関係ないので、頑張ってみてほしいところではあります。
Q:ご都合主義な話にならないようにするにはどうすればいいですか?
主人公の女の子に、好きになるようなところがあったかな?というときに、男の子が「好き!」となると、ちょっと都合がいいんじゃないかなと思います。ご都合主義といわれる話では、主人公の頑張りや良いところが描き切れていないのかもしれないですね。
私はベタな展開もいいと思っているんですけど、キャラクターにそぐわないベタが突然入り込んでくると、本当にもったいないなと思います。この子だったらこのベタな展開をどういうセリフでどう乗り越えるか、というのを描いてもらえると、すごくグッときます。そこがそぐわないと、よく見る展開が突然入ってきちゃうことになるので、ご都合主義になってしまうのかなと思います。
Q:最初は「この話面白いかも」と思って描き始めるんですが、だんだん面白いのか分からなくなっていきます。そういうときはどうすればいいですか?
どこが一番描きたかったポイントなのか。そのポイントに合わないエピソードが入っていたり、逆にエピソードが足りなかったりすると、そこを活かせていないことになるのかなと思います。
描きたかったのはシーンかもしれないし、1つのセリフかもしれないし。1つのセリフだとしたら、そのセリフに至るまでの心情がうまく組み込まれていると本当にそのセリフを活かせると思います。そのシーンを見せ場にしたいんだったら、基本ですが、あえてその前に落としてみるとか。
やっぱり、「ここを描きたい」と思ったところは間違いなく面白いところですよ。そこを見失わないで活かしていってほしいと思います。
だんだん面白くなくなるって、分かるんですけど、どんなに面白いものでも10回も20回も見れば飽きるんで、だから大丈夫、面白いと思います。
どうしても上手くいかないときは、今回はできないと思って捨てて、後に取っておくということもできます。いつか使えるかなと思って、ストックしておくというか。
Q:コマ割りや構図についてのアドバイスをください!
コマ割りが単調になるときは、大体気持ちが変わっていないとき。似たような絵面になるとか、同じような表情になっちゃうとか、それも全部気持ちが変わっていっていないからだと思います。話が展開しないときに私もよく起こるんですけど。そこに何かしら、主人公でも相手側でも、心の動きや、セリフに対してはっと思うことがあると、表情は変わってくるし、絵もコマ割りも変わってくると思います。気持ちの流れが平坦だと、単調になりやすいですね。
デビューしたころに、いくえみ綾先生のまんがを見たり、斉藤倫先生のところでアシスタントをしたりしていて、ただ凝っているだけじゃなくちゃんと読みやすいように計算されているコマ割りを見て、こういうのもあるのかと思いました。だから、色んなまんがを読んで、この人の画面がすごいと思ったら、そのまま描くのではなくテクニックとして理解することですね。コマ割りの基本はまずは見やすいことが大事だと思いますが、テクニックでも色々見せられると思います。そういうのは自分から思いつくのは大変なので、人のまんがから学びます(笑)。
人のまんがで、パラパラ眺めようかなと思っていただけなのに気づいたら読んでいた、というまんがって存在するんですよね。その共通点は、空間を作るのがすごく上手で、白で抜いてあるところがちゃんと活かされている。画面をトーンや背景など、絵で全部埋めたりせずに、白く抜いてあるところがあると、本当に画面ってグッと見やすくなるんです。「読みやすいな」と思うまんがを見たら、たぶんそういう作りになっていると思うので、ぜひ参考にしてみてください。
Q:画力向上のためのアドバイスをお願いします!
ちゃんと資料を見て短期間にたくさん描くと上手くなると思います。1枚描いて間が空いちゃうと忘れてしまうので。あと、ペン先に慣れることも大切ですね。
少女まんがなら、女の子はともかく男の子の絵は頑張ったほうがいいかなと思います。見た目のかっこよさで見てくれる人もいるので。立ち方とか、男の人の首の線が好きとか、そういうこだわりを頑張って描いたほうが良いと思います。
私は今、連載が終わったので絵の練習をしようと思って、描き方の本を買いました。全身の絵が描けなくて、身体に体重が乗っていないんですよね。ちゃんとポーズ集を見て描くと全然違うと思うんですけど、時間がない中で描いていくと、どうしても手癖になってしまう。そこを改善したいと思っています。
フェチはすごく大事なんじゃないでしょうか。「自分はこれがグッとくる」というのがあると、色気につながるので、自分のフェチを見つめて生かすと良いと思います。
投稿者へメッセージをお願いします!
若い人ならではのまんがが面白いと思うので頑張ってください!
投稿作や新人さんのまんがを読むのが好きなので、作品楽しみにしています。今日、1個でも「あ!」と思うことがあったらいいな。頑張ってください!
▲今回はペン入れ&ツヤベタの実演を見せてくださいました。こちらの下絵にペンを入れていきます。
▲原稿用紙の上に生桐山くん&爽子が生まれる瞬間を目撃! 投稿者の皆さんも間近で見入っていました。
▲完成!!
河原先生、椎名先生、どうもありがとうございました!