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2019年7月27日開催 まんがスクール大会in東京 アフターレポート!

2019年7月27日(土)に東京都内で行われた「まんがスクール大会in東京」。咲坂伊緒先生と木内ラムネ先生が講演をしてくださいました!その一部を、ここでご紹介♪

Q:イケメンを描くときのポイントを教えてください!
とにかく自分が萌えるという気持ちにゆだねること。その人がどういう仕草をするとグッとくる…とかを考えてみて、萌えるものを描くようにしています。
私はイケメンを描くのが苦手で…女子を描くほうが好き。なので、女子を先に決めてからそのコと相性いい男の子を描くようにしています。そうすれば必然的にイケメンな行動をしてくれるのでは…っていう考えです(笑)。
Q:女の子との“相性”はどう考えていっていますか?
ふたりのやりとりが盛り上がるかどうか。連載中の『月のお気に召すまま』は、ポンコツな歩とツンデレな月っていうふたりのやりとりが個人的に好きで。それぞれのキャラよりも、ふたり合わさったときの萌えで考えていくことが多いです。
Q:咲坂先生はアナログ、木内先生はデジタルで作業をしていますが、それぞれ選んだ理由は何ですか?
選んだ理由は、単純に私が描き始めた当時はアナログしかなかったっていうだけですね(笑)。デジタルに移行するにも、アナログで培った力加減が、そのままデジタル作画に使えるわけではないので……それに慣れるのにも時間が必要。それがデジタルへの移行を躊躇してしまう理由の1つです。ただ、自分の作業時間を短縮するためにも、いつかはデジタルに移行したほうがいいとも思います。デジタルでやったことがないので、良さを比べることはできませんが、アナログ作業でのペンが紙にひっかかる感じは気持ちよくて好きです。
私は今の作品より前はアナログで作業をしていました。でも背景を描くときの一点透視や二点透視ができなくて。その点、デジタルだと3Dという技術があって。それを使うといろんな背景が描きやすくなったのがよかったです。3Dを使った作画をどんどん勉強していこうって思いました。
Q:デジタルとアナログでの線の違いはどう解消しましたか?
『はぴきす』という作品の番外編を描くときにデジタルで作業してみたら、線がかなり細くなって、デジタルで描いた感じが出すぎてしまったんです。それ以降はその番外編の失敗したデータを印刷してから、自分のアナログで描く線と近い描き方を模索しました。画面で見ているだけじゃわからないので、印刷して見てみることが大事だと思います。
Q:使うトーンはどうやって決めていますか?
……ノリ(笑)? 誰にとっても使いやすいのはデリータの1261。ポップなシーンにもエモーショナルなシーンにも使いやすい。単体でもいいし、重ねても使いやすい。
私はデジタルだけどアナログっぽさを出したいので、アナログ時代によく使っていたトーンを探しています。少し点が粗いものとかはアナログな雰囲気に仕上がります。細かいと美しくなりすぎて、絵に合わなくなってしまうので。
Q:背景を描くのが苦手な投稿者さんも多いですが、おふたりはどんな練習をしましたか?
私も苦手です(笑)。なので、苦手なことをさけるためにアシさんにお願いしたり、コピーして貼っていい版権フリーのものを駆使したり。やりたくないことからどう逃げられるかを一生懸命探してみましたね(笑)。
Q:実際にある素材を使うと、どうしても素材っぽさが出てしまう気もしますが…。
その素材をトレースして、線を少しはぶいたりすると素材感が薄くなる気がします。
私も背景はまったく描けなくて…そこに時間をかけるのがきつかったので、デジタルに移行しました。ボタンを押すと絵や写真が全部線画になるのが3Dという機能。でもそのまま使うとデジタル感が消えないので、線画の上から線を引いて、アナログっぽさを出しています。
Q:オススメの作画資料本はありますか?
今でもチラチラ見るのが、動くポーズ集。ピタっと止まっている状態で撮った写真じゃなくて、動いてるところを撮ったポーズ集。リアルな体重移動をしている動きなので、使いやすいです。
『クリスタ』の3D機能がとにかくいろんな背景が描けるようになるのでオススメです。
それって“アイレベル(視点)”も変えられるの?
そうなんです!
すごい、最高だね!
オススメです!
Q:次は、各作品の名シーンについて教えてください。『思い、思われ、ふり、ふられ』のこのシーンは、コマ運びやテンポ、モノローグなどが印象的です。このコマ割りはどういう風に考えていきましたか?
このあたりにロングの絵を入れて、ここで表情を見せる…という風に流れでコマに入れる絵を考えていきます。私は個人的に横顔が好きなので、顔をあげて表情を見せるシーンは横顔に。そこをキメポイントにして、ほかのコマではどこで何をしているのかわかるようにロングの絵が必要かなと思い、入れました。
Q:次はMC8巻の、和臣が「つかまりにきたんだよ」というシーンについて教えてください。
鬼ごっこって“つかまる、つかまらない”というゲームじゃないですか。それが恋愛においての心をつかむという状況に似てるなぁと思ったので、このセリフを言わせたくて。以前、担当さんに「大事なことを言わせるときは、読者と目線を合わせろ」と言われたことがあったんです。それを意識するようになったら、読者のみなさんの反応が変わってきたので、このシーンでもそれは意識しました。あえてほかとはちがう、タテ長のコマにすることで、読者の視線の流れがこのコマで止まるんです。なるべく大きいコマにして、和臣と読者の視線が合うように気をつけて描きました。タテにひとつコマが入ると、視線を止めてくれるので見せ場のシーンで入れるようにしています。
Q:『月のお気に召すまま』の第14話のシーン。間接キスをするしないの展開の後の影キスがかわいい!
担当さんと間接キスの話で打ち合わせを進めていたときに、「間接も直接もしないようにしましょう」って提案されたところから生まれたんですよね。
担当編集S:そうですね。この作品はふたりの気持ちがすれちがっているところがおもしろさなので、間接キスとはいえ簡単にはしないほうがふたりらしいと思ったので、提案しました。
ただ、じゃあ何をしたらいいんだって悩みましたが(笑)。手やおでこにキス…とかいろいろ考えたけどなかなかしっくりこなくて。最後に思い浮かんだのが、影でのキス。
Q:次は、お話作りについてです。おふたりはストーリーとキャラ、どっちから考えていきますか?
私はそのときどきでちがいます。なんとなく次、こういうキャラを描きたいな…ってところから始まるときもあれば、シーンが浮かんで、それを組み込める話を考え始めたり。全体のテーマが先に浮かぶときもあります。
Q:“ふりふら”はどちらでした?
ふりふらは…お話の設定からだったかな?
Q:“同じマンションに住んでいる”ところ?
そっちよりは“ちがう価値観のキャラたち”かな。どっちが正しいとかではないけど、価値観がちがうふたりっていう。敵対せずに、それぞれが成長していける話にするにはどうしたらいいか…ってところから考えていきました。
Q:テーマを先に考えると、キャラがそのテーマから逸れることはないですか?
それはないかも。テーマに合わせてキャラを作っているので、そのテーマから生まれたストーリーの中でキャラが動かない…っていうことはない。キャラが思いついたときに、もとからあったテーマ内でそのコが最終的にどうしたいのかっていうのは、考えておきます。
私はシーンから浮かぶことが多いかもしれません。例えば、“遭難している男女がいて、何か会話をしている”とか。じゃあなんでこの会話が生まれたのか、それはきっとこういう性格だから…っていう風にふくらませています。
Q:例えばで遭難のシーンが出るのすごいですね(笑)。
私、アセっている状況を描くのが好きなんです(笑)。
Q:シーンを浮かべたときに、キャラがどういう表情をしているかも大事にしている?
そうですね。そのほうがより性格の想像がふくらみやすいです。
担当編集S:その状況に合った表情や性格を考えるのって大事ですよね。投稿者さんで話を作っているうちに、何を描いているのかわからなくなる…っていう方は、結局、テーマや状況からキャラがずれているんじゃないでしょうか。遭難している男女を描くときに、そのふたりは仲が悪いほうがよくて、そのピンチを乗り越えていく中で、その関係に変化が生まれるってすると描きやすい。遭難という設定を描きたいけど、ラブラブなカップルを描きたいとなるとズレが生じるので。お話の設定とキャラのバランスをしっかり考えるのは重要ポイントだと思います。
Q:キャラをかためることがニガテな投稿者さんも多いのですが、先生たちは読みきりの場合、キャラはどこまでつめていますか?
投稿作は16Pですもんね。それなら、16Pを通してキャラクターの人格がストーリーの中で見えていたら大丈夫な気がします。ストーリーを進めたいあまり、言わなさそうなことを言っちゃうと、しまりがなくなる。
Q:16Pで話をまとめるコツってありますか?
とにかくムダだと思われることは全部カットする。かつ、キャラがぶれていないかを重視。16Pの中でどんなキャラが見えるかが基本で、それが見たくて16Pっていう無茶な設定にしてると思うんです、編集部さんは(笑)。キャラの仕草や間の取り方で伝える技術を見たいはずなので、ムダをいかに排除できるかを考えて作るしかないと思います。
私は投稿時代に16Pまんがと向き合っているとき、キャラ表を作っていたことがありました。このコはこんな性格で好きな食べ物はコレとか。でも結果、その設定にとらわれて話が進まなかったんです。なので、描きたいシーンが1シーンできたら、このコはそのとき何をするのかを考えることだけに集中しました。どんなおもしろい行動をしてくれるかなって、できるだけ客観的に見られるようにして。
Q:ときめきシーンはどう考えると生まれますか?
最初の担当さんに“ホラーとかサスペンスが好きです”って話をしたことがあって。そのときに“ホラーやサスペンスのドキドキと恋愛のドキドキは同じだ”って言われたんです。例えば、最終的に犯人がチェンソーで殺しにくるシーンにドキドキしたとする。そのシーンを壁ドンに置きかえて、そこにたどりつくまでのテンポ感を同じにするんです。
担当編集N:最初に木内さんからその話を聞いたときは笑ってしまったのですが、たしかに木内さんのネームには毎話、びっくりさせよう、ときめかせようっていうシーンがあって。印象に残るシーン作りには、ホラー映画とテンポを合わせるのは大事なのかなと思いました。
Q:ネームって読み返しますか?
しています。吹き出しの位置を気にして読んでいますね。次のコマにいくときに視線の邪魔になっていないかっていうのを。もし邪魔になっていたら人物の位置を直してみたり。あとは言葉が余計じゃないかとか、シンプルな言葉はないかとかをもう1回考え直したりはしますね。
Q:右から左に読むときに障害物がないかを重視してるんですね。木内さんはいかがでしょうか?
私も読み返します。セリフが多いとどんなにおもしろくても、読むのが大変だと思うので。なるべくセリフを少なくして読みやすくなるように。
Q:続いて、再び名シーンについてお聞きします。“ふりふら”の4巻に収録されている夢のシーン。ここで理央が夢を見たことで、お話が大きく動いた気がします。このシーンはどう考えていきましたか?
連載の作品の場合、何話くらいでどこまで話を進めるのかはある程度設定しています。その中で、4巻では理央が無意識のうちに由奈に気持ちがあるっていうのを読者に伝えたかったんです。でもそれを理央の口からはっきり言わせるのはちがって。それが前提にあった中で思いついたのが夢のエピソードでした。ネームより前のプロットの段階で、由奈の夢だというミスリードを自然に見えるようにしっかり考えていきました。
Q:『月のお気に召すまま』のキャシー回。映画を観ていて、思いがけず色気のあるシーンが映ってしまう…というところからの展開でしたが。どうやって思いついたんですか?
これは私がスポンジボブ的なアニメの洋画だと思って人にすすめたら、とんでもないエロい作品で気まずかったことがあって…(笑)。でもこういうことってあるよなって思ったので、そこから生まれました。
Q:実体験なんですね。
はい。これに限らず、私自身アセった感情を覚えていることが多くて。自分がやらかした経験をときどき使っています。
Q:先生たちが自分の作品以外のマンガを読んでいて、共通して“いいな”と思うことってありますか?
私は、生っぽい会話がある作品。いかにもマンガっぽいセリフも好きだけど、“うわ〜こういう会話するよね”っていう生々しいセリフが、あとあとの展開で効いてくると“いい!”って思います。
私は恋愛面で“あぁ〜やられた!”って思えるビックリ展開がある作品が大好きです。先ほどのお話にも出た、“ふりふら”の夢のシーンとか!
Q:作品を描き続ける中で、モチベーションを維持するためにしていることは?
連載中のモチベだと、“これを落としてはならない…”っていう恐怖心ですよね(笑)。デビュー直後は、同期のみんながわりといっせいにネームをゴリゴリやる時期なので、みんなと一緒に前向きな気持ちでモチベは維持できていたと思います。仲間がいることはすごく大事。彼女たちがいるからがんばろうって思えた。
私も今はとにかく“やらないと落ちる!”っていう感覚ですが、投稿時代やデビュー直後はとにかくポジティブな妄想をしていました。“この原稿を描き終えたら、大好きな黒髪男子に好かれる!”とか(笑)。妄想をたくさんしてニヤニヤした気持ちで描き続けていました。実際、描き終えても好かれはしないのですが(笑)。
Q:担当さんにボツにされたときの切り替えは?
“なぜ!”とはやっぱり思いますよね。でも、ボツになったということは、やっぱりつまらないんだと切り替えて、次は担当さんを驚かせてやるぞ!ってサプライズを考える気持ちでやっていました。とにかく私自身が驚かされるのも驚かすのも大好きなので、次はこうやったら驚いてくれるかな?って考えて。
Q:コマ割りがどうしても単調になってしまう場合、どうしたらいいのでしょうか?
私もそんなにバリエはないです。自分のコマ割りのクセもあるし。でも、ちょっとずつ変えたり、ちょっとずつ増やしていけば、そんなにたくさんバリエがなくても単調には見えないはず。
Q:変形ゴマってどういうときに使いますか?
私はあんまり使いたくない派。私的にはコマ割りは見やすさが重要。変形ゴマを使うと見えづらい気がするので、使わないです。
Q:王道の少女まんがをおもしろく描きたい投稿者は多いです。先生たちは、王道まんがのおもしろさをどこに感じていますか?
王道の展開なのに、その人らしさが出ていると気になる。セリフもそうだし、それを言うタイミングとか。展開自体は王道なのに、細かなところでひねりが効いてると応援したくなります。
私も咲坂先生と同じです。すごいありがちなストーリーだけど、そのありがちな展開が起きるまでのエピがおもしろいと“いいな”と思います。
王道ではないバッドエンドの展開で“わっ!”と思わせるのは、そんなにむずかしくはないと思うんです。でもめっちゃベタな展開なのに“わっ!”って思わせられたら、それはすごい才能。王道でも自分の持ち味をどこに入れられるかが、別マでは勝負になってくる。
Q:今ハマっているまんがや映画など、エンタメはありますか?
まんがはとにかくたくさん読みますね。仕事が終わったあとに、電子書籍で週刊配信しているものを延々読んじゃったり…。『闇金ウシジマくん』とか、ドロドロした作品が読むのは好きです(笑)。
私は今とくにこれ!というものはなくて。ずっと好きな韓国のアイドルグループはいます。彼らがアイドルっぽくないむずかしい歌に挑戦しているところからハマって、ずっと好きです。
Q:咲坂先生は王道の枠組みの中で、何か挑戦をしているコンテンツに惹かれるんですね。
あーたしかに。そうかもしれないです。
Q:投稿者さんからの質問で“少し古い絵柄が好きなので、絵が古いと言われがちです。自分なりに研究してはいるのですが、今どきっぽい旬な絵柄はどういうところに感じますか?”ということですが。
私、木内先生の絵はイマドキっぽいと思います。
ありがとうございます!
まぶたの描き方とか。最近、横線で仕上げません?
私もそれすごい思います。目黒先生もそうですよね。
そうですよね。ひと昔前までは、タテ線で仕上げてたけど、今は全部横線だけでまぶたを仕上げてる。黒目とかも小さくなりつつあるのかな?
私はあまり絵柄は意識していないです。絵柄じゃなくて、靴下の短さとか制服の着こなしで今を取り入れられたらいいなって。インスタを見て“#制服ディズニー”で検索するのがオススメです(笑)。
Q:連載しているとき、ネーム・原稿の下描き・ペン入れなど、各作業はどれくらいのペースで仕上げていますか?
私が一番時間がかかるのが、プロットかも。イメージ的には、一ヶ月の半分はプロット、完成したら2日でネームを提出して、下絵も時間はかかるけど、全部の下絵を一気にあげているわけではなくて。下絵をしている途中からアシスタントさんに入ってもらってペン入れを始めることもあるので…どれくらいかなぁ。下絵に入ってから仕上げまでが10〜12日くらい。
私は多分、お話を考えるのに1週間くらい。プロットは作っていなくて、ネームから入ります。毎月16Pを2話分描くので、だいたい下絵から完成まで2週間くらいはかかっていると思います。
Q:おふたりともプロットやネームなど、下絵に入る前の作業に時間をかけているんですね。
お話に行き詰まってしまうので…。
Q:具体的にどういうことで行き詰まりますか?
そもそものエピが浮かばないっていうところです。説得力のあるものが浮かばないっていうことが多い。
Q:エピソードが決まれば、絵に落としこむのには時間はかからない?
そうですね。とにかくエピソードの最初のヒントが行き詰まると時間がかかっちゃいます。
Q:では最後に、投稿者のみなさんにメッセージを!
まず最初に思うのは、こういう講習会に来ようと思うだけでえらい。その気持ちを忘れないでほしい。そしてネームの作業をがんばってほしいです。ネームは描けば描くほど、自分でワザをつかめる。今はネームをたくさん切るとき。あきらめないで、とりあえず最後まで描いてみるクセをつけて、がんばってください。
ボツばっかりになったり、描きたいものがわからなくなることが多いと思います。でも、地道に描いていると“はっ!”ってコツをつかめるときがくるので、がんばってほしいです!
咲坂先生、木内先生、ありがとうございました!