2018年9月9日開催 まんがスクール大会in東京 アフターレポート!
2018年9月9日(日)に大盛況で行われた「まんがスクール大会in東京」。咲坂伊緒先生とオザキアキラ先生のお2人がまんがスクール大会の講師を務めてくださったのは今回で2回目。その講演会の様子の一部をご紹介します!
Q:魅力的なキャラクターづくりについて教えてください!
私は全部のキャラクターに、弱い部分とか駄目な部分をつくりたいと思っています。そういう弱い部分を克服しようとしているキャラクターに魅力を感じるんです。キャラクターが安全圏から一歩踏み出すところが一番物語としてはドラマチックだったりするので、読んでいる人の心が動く瞬間って、そういうところなんじゃないかなと思いますね。
やっぱり、ギャップというか、駄目なところを考えます。イケメンなのにどこか残念なところがあると、いじりやすい。完璧な人がいたらもうそこで完結しちゃって話が広がらないし、そのキャラが頑張らなきゃいけないことがないと、面白くならないんですよね。
Q:キャラクターはどうやって掘り下げていますか?
この人に何があったのかとか、どんな友達と今までつるんできたのかとか、キャラのバックグラウンドを考えます。べつにお話の中に出てこなくてもいいんですけど、それが自分の中で固まっていると、キャラクターが次に行動するときに、「これはやらないだろう」「これはやるだろう」というのが固まって分かってきます。
私もほぼ一緒というか、やっぱりバックグラウンドですね。あと、キャラは色々いても結局は全部自分の中から出てくるものなので、最終的にはすごく自分と向き合います(笑)。いつも1人会議を開いています。「なんで駄目なの」「なんでおまえはこれができないんだ」とか。途中でちょっと妄想が入ってきて、「実は中学のときにこういうことがあって…」とか…それでだんだん「ああ、そういう奴だったのか、おまえ」と分かっていきますね。
Q:ストーリーを考えるときに、一番気を付けているポイントはなんですか?
主人公が話の中でちゃんと自分の意思で動いているかと、その主人公が最初と最後で変化しているか、というのを意識しています。さっきも言いましたが、主人公が安全な場所から、ちゃんとリスクを負ったまま一歩外へ踏み出しているかどうか、というのは意識していますね。
私も、ちゃんと主人公がきちんと壁を乗り越えられるかというところは意識します。あと、描いてから一度目を離して読者視点になってみて、初めて読んだ人でも面白いと思うかどうかというのを考えますね。描いているときは本当に作品に入り込むんですけど、でも入り込みすぎると身動きが取れなくなるので。話に詰まったときは一度ちょっと離れて見ます。
Q:お話を無理やりな展開にせず面白くするにはどうすれば良いですか?
話の展開のためにキャラを動かし過ぎると、話全体がつかみづらくなってしまうので、どちらかにチューニングする。話に合わせたいならキャラクターを変更したり、どうしてもそのキャラがいいならキャラに合わせて話の展開を変えたり…そういう調整が必要なのかなと思います。「この話にしたい」という気持ちが強いとキャラを無視しがちになってしまうので、「このキャラは本当にこう動くんだろうか」というのを、ちゃんと一個一個確認しながら進めていくのがいいと思います。
やっぱり描こうとしている話と準備したキャラがかみ合っていないということだろうと思うんです。私だったらひたすらキャラに立ち返りますね。このキャラだったらこう動くみたいな。そこでキャラがしっかり動いてくれると、お話の道筋も自然とできてきたりもするので。
Q:読みきりの冒頭の見せ方で、気を付けていることはありますか?
なるべく説明をモノローグで入れないようにというのは、意識しています。あと、ページをすぐめくりたいと思えるかどうかは、やっぱり意識します。「次に何が起こるのかな」とか、「今、この人が言っていることは何なんだろう」と思ってめくってもらえるように、最初からちょっと仕掛ける、みたいな感じですかね。
やっぱり言葉で説明というよりも、絵で「何が起こっているの?」みたいな、視覚のインパクトを大事にしていますね。「一体何をやっているところなんだろう」「この子のことをもっと知りたい」という感じ。
Q:見せ場づくりのコツは?
大ゴマは使いたい。そのキャラの視線がどこを見ているかも注意しますね。ずっと前の担当さんに教えられたんですけど、例えば男の子が自分の気持ちを言うときに、舞台上では男の子と女の子が向き合っているけど、目線は読者に向けろと。まるで自分に言っているように描け、と。「おおー!」と思いました。こっちを向いてもらうと、他人事(たにんごと)じゃなくなる感じがしますよね。あと、見せ場のシーンの前に圧力がかかっているかどうかは考えていますね。見せ場のシーンが一番跳ねるように、その前でバネを縮ませるぐらいの圧力をかけて、ドンってなるような話のもっていき方にしたいと思っています。
私も、「このあたりで、大ゴマでこれを見せるぞ」というのを用意したら、その前あたりのページからお膳立てというか準備をじわじわします。その準備もわざとらしくならないように、あくまで自然にもっていけるように、ですね。
Q:かっこいい男子のキャラ・絵を描くコツやこだわりはありますか?
私は自分の好みしか描いていないんです。やっぱり自分が「こういうところが素敵だな」と思って描かないと、絵に出ないと思います。見た目の好みだけじゃなくて、男の人のこういう仕草が好きとか、こういう間の取り方が好きとか、そういうのでもいいと思うんです。あとは骨っぽく描くのが私は好きです。骨感(ほねかん)があるような感じ。私はうまく描けないんですけど、「この人は服を着ているけど、いい感じの筋肉、付いてまっせ」みたいな体のラインを描く方の絵が大好きなので、そういうふうに思ってもらえるように、自分の萌えとか、フェチを入れます。
私も、基本はとにかく自分の性癖に刺さるようなところを描きます。分かりやすくいうと、眼鏡を掛けさせたりとか。あとは、テレビとか雑誌とかを見ていて、「この人、格好いい」と思ったら、心の中でカメラで撮りまくって、「これはいつか描いてやる」と思ったりしますね。あと男子は、肩から腕にかけてのライン。理想はちょっととがった肩です。腰も、女の子のウエストはきゅっと細くかわいくという感じですけど、男の子はぱっと見、ずどんとはしているけど微妙なくびれがある。男の子特有のくびれは、すごく意識して描いています。
Q:線ががたがたになってしまいます。安定した線を描くコツはありますか?
勢いですね。たぶん緊張しちゃうから、がたがたっとなるんだと思います。私も本当にがたがたで、こんなのですっと描くことなんて不可能だと思っていたんですけど。別の原稿用紙で練習して、「このぐらいの手首の力と筆圧なんだな」というのを覚えてから本番の原稿用紙に向かうとか、やっていました。
私も最初は緊張して、もうガリガリ、ガリガリって描いていたんです。地方だったのであまりアシスタントに行く機会もなく、ペンの使い方が全然分からなくて。本で調べたんですが、言葉で書かれているのを読んでも全く分からないんですよね。でも、あるときアシスタントに行く機会があって、とても作画のきれいな方だったので「見てやろう」と思って。ちらちらと見たら、シャッシャっと本当に鉛筆で描いているのかというぐらい力が抜けていた。「あ、そんな力でよかったんだ」と、そこから変わりましたね。
Q:色々な表情を描くコツは?
絵って、2次元じゃないですか。リアルな人間がしゃべっているより断然情報量が少ないので、それを伝えなきゃいけないから、表情は大げさにすることも必要ですね。絵の中で、持っている感情の200%の顔をさせるとか、表情筋をちゃんと動かしてあげるとかですかね。
あとはやっぱり目かなと思うんです。目を思いっきり細めるとか、にらみを利かせるとか、見開くとか。目を変えるだけで、すごく変わってくると思います。
Q:自分の恋愛経験を作品に活かすことはありますか?
エピソードを丸ごとはないですけど、誰かを好きになっているときの感覚は、全部出ますね。その人を好きになったときの自分のコントロールが利かない感じとか、学生時代に好きな人が廊下を歩いているだけで何も聞こえなくなるみたい感じとか、そういう感覚を描きたいなと思っています。
リアルな出来事をそのまま描いても、まんがとして面白くないのは分かっているので。私は女子校だったので高校時代にきらきらしたエピソードがないんですけど、でも例えば、部活の大会で会う他校の先生がちょっと好きな時期がありまして、大会に行くたびにその先生に会えるのが楽しみだったりとか、どういう目でその先生を見ていたとか、エピソードとか出来事そのままじゃなくて、そのときの感情を思い出したりしています。
Q:行き詰まってしまって、なかなかネームを完成させることができません。完成までモチベーションを保つにはどうすれば良いですか?
ネームにすごく時間がかかっている人を見ていると、まず描きたいものがないのかもしれないな、という気がしますね。だから、「自分はこれが描きたいんだ」と思ってネームに向かっているかどうか、もう一回確認すること。もし描きたい部分があるのであれば、その部分を最高の演出で、どうやったら人に楽しんでもらえるかを考えると、ちょっとワクワクしてくるんじゃないかな、と思います。
昔、編集さんに「お話は生もの」だと言われたんですが、やっぱり時間が経てば経つほどぼやけてしまうので、「これだ!」と思った瞬間にばっと描いてしまわないといけないと思います。あとは、とにかく自分のキャラを心から愛せるぐらいまで大好きになって、この子たちをどうにかいい舞台まで連れていってあげたい、という気持ちでやっていきますね。
Q:ずっとまんがを描き続けるモチベーションはどこから生まれますか?
やっぱりそれは、自分の中の負けず嫌いですね。1本1本を仕上げるたびに「これが終わったら、もう描かない」と思ったりもするんですけど、「次に描いたら、もっと面白いのが描けるかもしれない」という気持ちで、やめられずに今に至る、みたいな感じです。
本当にその連続で、気付いたらここにいる、という感じです。いっとき本当に描けなくなって、「もうまんが描くのはやめる」と言っていたときもあったんです。でも、やっぱり描き切りたいというか。まんがを描くのってすごく面倒くさいんです。1枚1枚、ひとコマひとコマ、いろんなキャラや絵を描かなきゃいけないし、お話も書かなきゃいけないし、ペンを入れて、トーンも貼らなきゃいけないし。でも出来上がったら、スカッとしてどうでもよくなるんです。
出来上がったときの感動、投稿作1本目のそのときの気持ちがまだあるから、描いちゃうんだろうなと思いますね。描いている途中は「このコマ、描きたくない」「こんなポーズ、全然描きたくない」とか思いますけど、それをちょっとずつ進めて、束になって、トーンを貼ったりして、まんがになるんだと思ったらすごくワクワクして、「次はもっとうまくいくかも」っていう気持ちになります。それの繰り返しですね。
Q:投稿者に向けてメッセージをお願いします!
1、2本描いたぐらいでは、たぶん自分らしさというのがまだ分からないと思うんです。描けば描くほどネームも楽になりますし、自分の強みはこれなんだなって客観視できたりもします。だから、ありきたりから抜け出したときに、自分は変われる、デビューできると思って、描き続けてください。頑張ってください!
まんがって独りぼっちで描くのが本当に大変だと思うんですけど、でもそれすらも楽しめるぐらい、とにかく自分が楽しんで描くのが一番大事だと思います。私もダメ出しされると2、3日、部屋の隅っこでうずくまっているぐらい打たれ弱いところがあるんですけど、やっぱりどこかで「でも、ここで終わりたくない」という気持ちがあったので、ここまで来られたのかなと思います。少しずつでも前に進んで、頑張ってください!
咲坂先生、オザキ先生、ありがとうございました!
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椎名軽穂先生
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目黒あむ先生